円筒分水工

1.円筒分水工とは

円筒分水工とは川やため池からの水を各地区へ均等に分配する施設です。水資源の少ない地域では干ばつになると水の配分による農民同士の水争いが絶えませんでした。その争いを収める為の施設として考案されたのが、この円筒分水工です。円筒分水工は、取水源からの水を中心から湧き上がらせ、溢れる水を円周を区切って各水路に配分することで一目で水量比率がわかる理想的な施設です。
岩手県では胆沢平野地区にある德水園の円筒分水工が有名で、その歴史的背景や施設自体の存在感と機能美により本改良区のシンボルともなっています。(詳しくは胆沢平野土地改良区のHPをご覧下さい。歴史や機能について丁寧な説明があります。)円筒分水工の通水式では毎年県知事も出席しニュース報道されるなど、現在でも重要な施設となっています。
しかしながら円筒分水工は構造が複雑であることや工事費が高いということから、箱型の分水工が主流となり、円筒分水工の採用はみられなくなってきました。
そこで弊社では、この円筒分水工の機能を現在の施工技術にも適用が可能となるよう、2次製品を用いた改良について研究・開発を進めてまいりました。研究は、先代社長の浅倉が岩手大学の協力を得て実験を重ね、平成15年には研究成果を発表し、設計技術を確立しております。実際にその成果をもとにして、現在までに数基の円筒分水工を設計・施工されています。

円筒分水工実験装置
円筒分水工実験装置
徳岡水路(岩手県奥州市胆沢区)
徳岡水路(岩手県奥州市胆沢区)

2.円筒分水工の利点

2次製品を利用した円筒分水工の利点として、次の点があげられます。

  • 施工性が良好(構造が単純で、現場作業が少ない)
  • 経済的に優れる(工期が短縮され、付帯施設が少ない)
  • 施設規模が小さい(少ない用地面積で敷設可能)

3.円筒分水工の施工例

事例1 胆沢平野地区 寿安上堰 立石分水工

位置 岩手県奥州市胆沢区
施工年度 平成18年度
施設規模 外筒 HPφ3000 内筒 HPφ1200
分水量 Q=0.287m3/s 立石水路:Q=0.113m3/s
稲置水路:Q=0.174m3/s
寿安上堰円筒分水工全景
寿安上堰円筒分水工全景
寿安上堰円筒分水工内部
寿安上堰円筒分水工内部

事例2 稲瀬地区 正源寺分水工

位置 岩手県奥州市江刺区
施工年度 平成17年度
施設規模 外筒 HPφ3000 内筒 HPφ1200
分水量 Q=0.237m3/s 三照支線用水路:Q=0.132m3/s
正源寺用水路:Q=0.105m3/s
稲瀬正源寺円筒分水工全景
稲瀬正源寺円筒分水工全景
稲瀬正源寺円筒分水工内部
稲瀬正源寺円筒分水工内部
稲瀬正源寺円筒分水工越流状況1
稲瀬正源寺円筒分水工越流状況1
稲瀬正源寺円筒分水工越流状況2
稲瀬正源寺円筒分水工越流状況2

事例3 鳥野軽石地区 軽石分水工

位置 岩手県奥州市江刺区
施工年度 平成18年度
施設規模 外筒 HPφ3000 内筒 HPφ1200
分水量 Q=0.105m3/s 軽石線  :Q=0.066m3/s
軽石3号線:Q=0.039m3/s
軽石円筒分水工全景
軽石円筒分水工全景
軽石円筒分水工内部
軽石円筒分水工内部
軽石円筒分水工越流状況1
軽石円筒分水工越流状況1
軽石円筒分水工越流状況2
軽石円筒分水工越流状況2