1 はじめに
自然保護や環境への配慮の観点から農業用用排水路などで、通水という水路の基本的機能を確保した上で環境に配慮した設計施工が求められるようになった。
このような水路を設計する上で問題になるのが、環境に配慮した水路の水理学であり設計手法である。そこで、通水機能を確保しかつ環境に配慮した水路の水理学の研究をし、その水路の抵抗特性を把握し定式化に至った。(※)自然石を配置した水路の抵抗特性)
(※)研究論文「自然石を配置した水路の抵抗特性に関する研究」のあらまし
近年、人工の農業用用排水路などの改修整備に当って、自然保護や環境保全への配慮が求められている。この観点から、人工水路に自然石を配置(人工粗度)した設計が目的に適うと着目した。
このような人工粗度を考慮した浅い流れに関する抵抗特性や水面変動等の水理特性に関する研究は古くから行われてきたが(例、足立1963)、定形の人工粗度を等間隔で配置したものや、個別事例で適用範囲が限定的であったため、自然石を自然に近い状態で設置した場合の一般的抵抗特性については、十分解明されていなかった。従って、自然石を配置した水路の水理特性を解明し、設計に活用し易い手法を確立することは、生態再生や環境面で水理学上の極めて重要な今日的課題となっている。
定形の人工粗度を配置した水路の水理特性は、一般的にレイノルズ数、フルード数、粗度配置密度、粗度高と水深、粗度要素の大きさなどの要因に影響される。自然石を配置した水路では、粗度形状の多様性と配置の不規則性と言う水理学的特長、すなわち「粗度形状」と「粗度配置」と言う特有の要因を考慮しなければならない。
本研究は、特に粗度形状や粗度配置が抵抗特性にどのように影響するかを、水理模型実験により解明しようと、群体配置の抵抗特性解明に最終目標をおいて、粗度形状の複雑さと配置パターンの多様さと言う2つの課題に取り組んだ。結果的には、抵抗特性の物理機構解析というより大きなテーマに取り組み、制約条件の多い中での研究成果は充分でないが、所期の目的である群体粗度の抗力定式化や床面のせん断抵抗に基づく抵抗特性の解析手法を導き、抵抗特性の物理機構解析に示唆を与える研究になっている。
「環境に配慮した水路設計」
「環境に配慮した水路設計における水理学的課題」(浅倉千吉)より抜粋
2 水理学的課題事例
6) 自然石水路 自然石などといった不定形の粗度要素を配置した水路。それらの粗度要素の形状と配置の流水に対する影響を解析し、定式化した。